はじめに
2023年9月のUnity税騒動は、我々のような個人制作者には衝撃すぎる出来事でした。その際に、Unityから他のゲームエンジンに乗り換えた人もいると思います。しかし、その後に料金体系の見直しやUnity6のリリースにより、覇権を取り戻しつつあることをご存じでしょうか?
この記事では、Unity税騒動の後のUnity Technologiesの動向や、現在の料金体系などを解説します。
Unityとは?

Unityは、Unity Technologiesが開発・提供するゲームエンジンであり、2D・3Dゲーム開発のための強力なツールセットを備えています。
特に、直感的なインターフェースや多様なプラットフォームへの対応により、インディー開発者から大手ゲームスタジオまで幅広く採用されており、業界のトップシェアを誇っています。
Unityの特徴には以下のような点があります。
- マルチプラットフォーム対応: Windows、macOS、iOS、Android、コンソール機、VR/ARなど幅広いプラットフォームで動作可能。
- 豊富なアセットストア: 3Dモデル、スクリプト、エフェクトなどが入手でき、開発を効率化。
- C#による開発: C#を用いたスクリプティングにより、学習コストが比較的低い。
- リアルタイムレンダリング: 高度なグラフィック表現が可能。
Unityが「世界で最も使われているゲームエンジン」たる所以
Unityは、ゲーム開発者にとって非常に強力なツールであり、「世界で最も使われているゲームエンジン」として広く認識されています。
その成功の背景には、汎用性の高さや開発者に優しい設計があるためです。本記事では、Unityの優れた点について詳しく解説します。
1. 幅広いプラットフォーム対応
Unityは25以上のプラットフォーム(PC、モバイル、コンソール、VR/AR、Web)で動作可能です。
- モバイルゲーム市場で圧倒的なシェア(iOS、Android)
- コンソールゲーム開発も可能(PlayStation、Xbox、Nintendo Switch)
- VR/AR開発にも対応(Meta Quest、HoloLens)
この柔軟性が、多くの開発者に選ばれる理由の一つとなっています。
2. 初心者でも学びやすい
Unityは、プログラミング初心者にも扱いやすい設計がされています。
- C#を使用したスクリプト言語 → 学習コストが比較的低い
- 直感的なビジュアルエディタ → コードを書かなくても基本的なゲーム開発が可能
- 豊富なチュートリアルとドキュメント → 初心者からプロまで学びやすい環境
そのため、個人開発者やインディーゲーム開発者にも広く使われています。
3. 2D・3D両方に強い
Unityは、2Dゲームと3Dゲームの両方に対応できる数少ないゲームエンジンの一つです。
- Hollow Knight、Among Us などの2Dゲームが大ヒット
- Genshin Impact のようなオープンワールド3Dゲームも開発可能
そのため、幅広いジャンルのゲーム開発に利用されています。
4. 強力なアセットストア
Unityには「Asset Store」があり、ゲーム開発に必要な3Dモデル、アニメーション、エフェクト、スクリプトなどが揃っています。
- 開発時間を短縮できる
- インディー開発者でも高品質なゲームを作れる
アセットストアの存在が、Unityの開発スピードを大幅に向上させています。
5. 無料で使える(条件付き)
Unityは小規模開発者向けに無料(Unity Personal)で提供されており、一定の収益を超えた場合のみ有料プラン(Unity Pro)へアップグレードが必要です。
- 初期費用ゼロで始められる
- インディー開発者にとって参入しやすい
これにより、多くの個人開発者がUnityを選択する要因となっています。
6. 世界中で圧倒的なシェア
Unityは、ゲーム業界において圧倒的なシェアを誇ります。
- モバイルゲーム市場の約70% がUnityで開発されている
- Steamでもインディーゲームの多くがUnity製
- 代表作:
- Pokémon GO
- Genshin Impact
- Among Us
- Hollow Knight
これらの実績が、Unityの成功を物語っています。
7. ゲーム以外の分野でも活躍
Unityは、ゲーム業界だけでなく、映画、建築、医療、シミュレーションなど幅広い分野で活用されています。
- 映画制作 (ライオン・キングの制作に使用)
- 自動車シミュレーション (BMW、トヨタなどが採用)
- VR/ARコンテンツ (Meta、Microsoft HoloLens などで活用)
このように、Unityは「ゲームエンジン」の枠を超えて、多くの業界で利用される技術へと進化しています。
Unity税による失墜

2023年9月、Unityは新たな料金体系「Unity Runtime Fee(通称: Unity税)」を発表し、業界に激震が走りました。従来のサブスクリプションモデルに加え、ゲームのインストール回数に応じた追加料金が発生するこの制度は、多くの開発者から反発を受けました。
Unity税の問題点
- コストの不透明性: インストール数に応じた料金が発生するため、開発者がコストを予測しにくくなった。
- インディー開発者への負担増: 小規模開発者にとっては特に影響が大きく、事業継続が困難になるケースも。
- 不信感の増大: 料金変更が突如として発表され、ユーザーとの信頼関係が損なわれた。
この結果、多くの開発者がUnityの代替としてUnreal EngineやGodotへ移行を検討し、SNSでは「#Unityやめます」といったハッシュタグが拡散しました。Unityの評判は急落し、企業としてのブランドイメージも大きく損なわれました。
Unity復権へ動き出す

そんな苦境の中、Unityは立て直しを図り、2024年9月19日に開催された年次開発者カンファレンス「Unite 2024」にて、Unityの最新バージョン「Unity 6」を発表。10月17日に全世界でリリースされました。
また、新機能の追加や料金体系の見直しにより、開発者の支持を取り戻しつつあります。
Unity 6の主な新機能
1. 次世代グラフィックの強化
Unity6では、レンダリングエンジンが大幅にアップグレードされ、リアルタイムレイトレーシングやパストレーシングが強化されました。
- HDRPの最適化:よりリアルなライティングと影の表現。
- URPの強化:モバイルデバイス向けにパフォーマンス最適化。
- AIベースの自動マテリアル適用:環境に応じたテクスチャの自動調整。
2. AI支援開発機能の搭載
ゲーム開発の効率化を目的に、AIを活用した新機能が導入されました。
- Unity Copilot:コードの補完、デバッグ支援、自動最適化。
- NPC AI生成ツール:キャラクターの動作や会話を自動生成。
- プロシージャルアセット生成:レベルデザインの作業を短縮。
3. マルチプレイヤー開発の強化
オンラインゲーム開発を容易にするためのネットワーク機能が大幅に改善されました。
- Netcode for GameObjectsの改良:より低遅延でのマルチプレイ対応。
- クラウド同期機能:リアルタイムデータ同期を簡単に実装可能。
- マッチメイキングの自動化:プレイヤーのスキルに応じた適切なマッチング。
4. モバイル向け最適化
モバイルゲーム開発者向けに、Unity6ではパフォーマンスの最適化が進められています。
- 軽量化レンダリング:低スペック端末でも高品質なグラフィック表現が可能。
- バッテリー消費の最適化:長時間プレイしてもバッテリー負荷が軽減。
- タッチ操作の改善:直感的なジェスチャー認識機能の追加。
これらの改善により、特にインディー開発者にとっては再びUnityが魅力的な選択肢となりつつあります。
Unityの現在の料金プラン
Unityは、開発者のニーズに応じた以下の料金プランを提供しています。
1. Personalプラン
- 料金: 無料
- 対象: 過去12か月の収益または資金調達額が20万ドル未満の開発者
- 主な特徴:
- Unityの基本機能をすべて利用可能
- スプラッシュスクリーンのカスタマイズが可能
- 専用のテクニカルサポートなし


これまで無料のプランでは強制だった、起動時のスプラッシュスクリーンの表示が任意になりました。これにより起動時間が大幅に軽減されました。
2. Proプラン
- 料金:
- 年払い: 302,940円(税込)
- 月払い: 27,500円(税込)
- 対象: 年間収益が20万ドル以上の開発者や企業
- 主な特徴:
- 全機能へのアクセス
- スプラッシュスクリーンのカスタマイズ可能
- 優先的なテクニカルサポート
3. Enterpriseプラン
- 料金: 年間 445,500円(税込)
- 対象: 大規模な組織や特別な要件を持つ企業
- 主な特徴:
- 専用サポートチームによるテクニカルサポート
- 高度なクラウドビルド機能
- 詳細な分析ツール
4. Industryプラン
- 料金:
- 年払い: 735,900円(税込)
- 月払い: 66,880円(税込)
- 対象: ゲーム開発以外の産業向け
- 主な特徴:
- 特定の産業向けツールセット
- データ解析、リアルタイムシミュレーション機能
- 専任アドバイザーによるサポート
この新料金プランは2024年4月9日より適用されており、「Unity Runtime Fee」は撤回されました。
Unityの株価の推移と傾向

Unity税の発表以降、Unity Technologiesの株価は急落しました。2023年9月に料金体系の変更が発表されて以降、投資家の不安が高まり、株価は大幅に下落。
しかし、その後の料金プランの見直しやUnity 6の発表により、徐々に回復傾向を見せています。
株価の変動ポイント
2023年9月: Unity税発表による急落
Unity税の発表直後、開発者の大規模な反発が発生。特にインディー開発者層が離反する動きを見せ、企業価値が揺らぎました。
その結果、投資家の売りが集中し、株価は急落。
2023年10月〜12月: 信頼低下と株価低迷
開発者の間でUnityからの移行が議論され、SNS上でもネガティブな声が広がりました。
Unityのブランドイメージが大きく損なわれ、株価の回復は見られず低迷状態が続きました。
2024年3月以降の動向
- 2024年4月: 日本における有償プランの価格改定。
- 2024年9月: Unity Runtime Feeの完全撤回と新料金体系の発表。
- 2024年10月: Unity 6の正式リリース。
- 2025年1月〜2月: 大規模な人員削減。
- 2025年3月: 株価は20.54 USDで推移。
今後、Unityが開発者の信頼を完全に取り戻せるかどうかが、株価のさらなる回復に影響を与えると考えられます。
Unityの将来性

Unityは、過去の失敗から学びつつ、今後のゲーム業界での影響力を取り戻そうとしています。
特に以下の分野での成長が期待されています。
- VR/AR市場でのリーダーシップ
- Meta QuestやApple Vision Pro向けの開発が活発化。
- AR技術を活用した新しいゲームやアプリの増加。
- AIとの融合
- AIによるゲーム制作の効率化。
- AIを活用したリアルなNPCの実装。
- インディー支援の強化
- 無料プランの拡充やサポート体制の強化。
- アセットストアの拡充により、開発コストの削減を支援。
- クラウド技術の活用
- クラウドベースのゲーム開発ツールの拡張。
- マルチプレイヤーゲーム開発のさらなる強化。
Unityはこれらの取り組みを通じて、再びゲーム開発者にとって欠かせないツールとなる可能性が高いです。
まとめ
一時は「Unity税」により大きな批判を受けたUnityですが、新バージョン「Unity 6」の発表と料金体系の見直しにより、開発者の信頼を取り戻しつつあります。
- Unity税の導入によって、ユーザーの反発と株価の急落が発生。
- Unity 6での新機能追加とパフォーマンス向上、料金体系の見直しにより、開発者の関心が再び高まる。
- 株価も回復傾向にあり、今後の成長が期待される。
- VR/AR、AI、クラウド技術などの分野での活躍が鍵となる。
今後、Unityがどのように市場を牽引していくのか、引き続き注目が集まります。Unity復権の日は、そう遠くないかもしれません!
ゲ制最高!
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